第三十話 〜 夢の続き
・・・・私は一人、暗い夜道を歩いていました。辺りには街燈も何もなく、月明かりだけが
頼りの、細く長く、寂しい道でした。
・・・・ふと、背後に人の気配を感じます。 私はその気配に警戒し、早歩きになりました。
すると、後の何者かも、私の足取りに合わせ、早歩きになります。 恐ろしくなった私は
小走りし始めました。 するとまた、後も小走りに。 ・・・・つけられてる・・・・
私の恐怖感は極まり、一目散に駆け出しました。 後の何者かも私を追うように走り
始めたのです! コワイコワイコワイコワイコワイ・・・・・・
私は無我夢中で走りました。 ・・・ 走って行くと、目の前に大きな沼が見えてきました。
・・・道は沼の前で止まっていたのです。 ・・・どうしよう、行き止まりだわ・・・・
私は途方に暮れ、呆然と沼の前に立ち尽くし、恐怖のあまり体はガクガク震え始め・・・
そのうち ハーハーゼーゼーと息を切らせながら、追手はこちらに向かって来ます。
「・・・もう駄目だ・・!」 そう思った時、沼の中から青白い手がヌ〜っと出てきて、私の
右足を強く引っ張り始めたのです!
キャ〜〜〜〜!!! 
私は必死に抵抗するのですが、手はどんどん私を沼の中へと引き摺り込みます。
沼の淵には、さっき私を追っていた人影がうっすらと月明かりに照らされ、浮かび上がって
います。 ・・・髪が長く、白い服を着た女です・・・ 右手には鉈を持っています・・・
不意に雷が鳴り、女の顔が垣間見れました。 ・・・顔半分がありません・・・・。
着ている服は血だらけです・・・。
・・・私は 「・・きっと、これは夢なんだ、そうだ、こんなバカなことがありえるはずがない。
私はこれから沼の中に引き摺り込まれようとしているけど、そこで目が覚めるはず・・・」
そう自分に言い聞かせ、冷静さを取り戻そうと必死でいました・・・・。
・・・・ハッと目が覚めました。 やはり夢でした。 悪夢でした。 ・・・・目覚めた後も
体は硬直し、あの、冷たい手の感触が右足首に残っています・・・・ 私は体を起そうと
しました。 しかし体はグッと金縛りにでも遭ったかのように、鉛のように重く動きません。
ふと足元を見ると・・・・ なんと、夢で見た白い手が私の右足首をまだ掴んでいるでは
ありませんか! 恐ろしさのあまり、声も出ません。冷たく湿った白い手はギュッとゆっくり
私の足首を握り返し、ベッドの下へと引っ張ります。 ・・・・ ふと横を見ると・・・・・・
なんと夢で見た、あの、顔半分の鉈を持った不気味な女が、ベッドの脇にボ〜っと立ち、
私の顔を恨めしそうにじっとりとみつめているです!!!!
キャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!
恐ろしさのあまり、パニックになり、大声で叫びました。 すると、横で熟睡していた彼が
飛び起き、「ど、どうしたの? また変なオバケでも見た?」
そう言って、私を抱き寄せ、照明をつけてくれました。
・・・・ベッドの脇にいたはずの女は消え、白い手も私の足から離れていました。
「・・・夢?・・だったのかな?全部・・・・」
私は彼に抱きつきながら、そう呟き、ふと右足首を見ると・・・
右足首に、うっすらと赤い跡が付いていたのです。 彼が私の足首に触れてみると、
「なんだこりゃ? なんか、すごく冷たくなってるし・・・今まで水にでも浸かっていたような
湿っぽい感じがするぞ。」
そう言いながら、私の足首を摩ってくれました・・・・・。
一体・・・ どからどこまでが夢だったのでしょうか? 最初から最後まで夢だったのか?
途中で起きた所までが夢だったのか・・・・・ それとも・・・もしかしたら・・・最初から最後
まで夢ではなかったのかもしれません・・・・・・。
貴方は・・・夢がとてもリアルに感じたことはありませんか? ・・・ それが、その生々しい
感触が、夢であったと確信できますか? ・・・・
・・・もしかしたらその時・・・夢とあの世が摩り替わっていたのかも・・・しれませんよ・・・・。
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第二十九話 〜 後部座席 
最近グッと寒くなってきてからは、随分車を運転する機会が増え、歩いてすぐの所や
娘の幼稚園の送り迎えにも、毎日のように車を使うようになりました。
車の後部座席には、子どもたち二人のチャイルドカーシートが並んでセットされて
います。 子ども連れで出かける時は特に気にもならない後部座席ですが、例えば
今朝のように、娘を幼稚園に送った後、一人家へ向かう時や、一人で出かける時
などは、度々不思議な現象と遭遇することがあるのです・・・・・。
貴方も一人で車を運転している時、背後に何かふと気配を感じたことはありませんか?
・・・・ そう・・・ 多くの方が体験済みであろう、背筋がゾワっとするあの、なんとも喩え
難い恐怖の悪寒を・・・・。
今朝、娘を幼稚園へ送った後、いつものように私は車に乗り、家路に向かいました。
シートに座り、エンジンをかけ、車を出して間も無くのことです。・・・背後からヒンヤリと
した空気が、私の頬の辺りに漂って来ました。 私は嫌な予感がして、なるべく後ろを
見ないようにし、大好きなリッキーの曲のボリュームを上げ、無理に鼻歌を歌いながら
気にせず運転に集中をしていました。
・・・しかし・・・ 私はその時既に、強い霊気を全身で感じとっていたのです。
私が無反応なのが面白くないのか、それとも構って欲しいのか、そのうち霊は、次の
アクションに移りました。 私が座っているシートの背を、後から足でドンドンと蹴り始め
たのです。 そう、子どもをチャイルドシートに乗せて運転したことがあるかたはお分かり
だと思いますが、チャイルドシートに乗った子どもの足って、前の座席の背凭れの真中
に、ちょうど当るくらいの位置にあるのですよね。 そこで私は、
「ああ、また子供の霊だわ」
と、確信しました。
それでも私は無言で家路に向かいました。霊の相手をし、事故など起してしまったら
大変です。 私の背を蹴る行為が4〜5分程続いた後、 そのうち何故か嘘のように
背を蹴る行為はピタっと止んだのです。
「・・・やっと降参してどこかへ行ってくれたかな・・?」
と思いながら信号待ちをしていると・・・・・
「・・・うしろのしょうめんだぁ〜〜れ・・・」
という子どもの声が、突然聞えてきたのです。 それも、一人だけの声ではありません。
・・・恐る恐るバックミラーを覗いてみて仰天しました・・・なんとそこには・・・
・・・・2人の子どもがシートに座っていたのです・・・・
子どもたちはバックミラー越しに私の方へ強い視線を向けています。 私は恐ろしく
なり、無我夢中でお経を唱えました。 不意に後から目隠しされても困りますので、
すぐに車を路肩に止め、車から出ていってもらう為一心に祈りました。
・・・10分くらい時が過ぎた頃でしょうか。急に身が軽くなり、後の気配もなくなりました。
「・・・・消えてくれた・・・・」
私はホッと胸を撫で下ろし、急いで家路に向かいました。
午後になり、娘を幼稚園へ迎えに行った時のことです。娘がいつものようにカーシート
に乗り込むと、
「あれぇ〜? これどうしたの?」
「え?何が?」
私は後を振り向き、娘の座席を確認したところ、なんと、カーシートの横に置いてあった
子ども用のお菓子の袋がバラバラになり、シートの下に散乱していたのです。
「車の下が汚くなってるよ。ねえ、誰がこのお菓子食べたの?」
・・・・あの2人の子たちは、お菓子に満足し、私から離れてくれたのでしょうか?
それともまた、ある日突然、私の車のカーシートに戻ってくる時が来るのでしょうか?
お菓子の袋の音って、ガサガサするはずなのに、どうして私にはその音が聞えなかった
のでしょうか? ・・・ 考えれば考えるほど、謎は深まるばかり・・・・。
・・・貴方が一人で運転をする際、貴方の車の後部座席には誰も乗っていないという
確信が持てますか・・・?
もしも、背筋にヒヤっと何かを感じたなら、振り向かない方が無難です・・・・・。
何故ならそれはきっと・・・・・・・
特に、暗い夜道の運転は気をつけて下さいね。 拾ってしまいやすいですから・・・。
・・・目が合ったら最後、貴方の後をどこまでもついてきます。就寝前、部屋の窓に
目をやってみて下さい。 恨めしそうに、今にも部屋に入ってきそうな眼差しで、
外から貴方を覗いているはず・・・。
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第二十八話 〜 うどんげの花(優曇華)
皆さんはうどんげの花というものをご存知でしょうか?その花を見ると
忌まわしいことが起きるとされ(その逆の説もあるようですが)、私の祖母は
凶兆として忌み嫌っていたものです。 うどんげの花というのはクサカゲロウ
の卵で、草木の枝や古材、器物に産み付けられ、白い糸状の柄になり、
それが花のように見えるのでそう名づけられたらしいのです。
・・・私が小学3年生の頃のことです。 忘れもしません。仲良しのお友達の
家へ遊びに行った時のこと・・・。リビングでケーキをご馳走になっていた時、
シャンデリアの陰から何か白いものを見つけました。
「・・・あれ、何だろう?」
私は立ち上がり、その白い物を覗いてみると、そこには音符の形をした白い
花が無数に咲いていたのです。
お友達のお母さんはそれを見ると、
「あらやだわ。こんな所に気味が悪い。きのこでも生えてきたのかしら!」
そう言ってその花を拭き取ってしまいました。
帰宅し、シャンデリアの陰にあった白い花のことを祖母に話してみると
「・・・もしかすると、それは『うどんげの花』かもしれないね。」
と、祖母は静かに語りました。
「うどんげの花?それなぁに?」
私は不思議に思い訊いたのですが、祖母は何も教えてくれませんでした。
それから数日後、仲良しのお友達は急に転校することになりました。
本当に急なことでしたので、別れを告げる間もなく彼女はいなくなって
しまいました。
後から人づてに聞いた話ですが、お友達のお父さんの会社が倒産したそうで、
その後残念ながらお友達からは何の連絡もなく、随分心配したことを覚えて
います。
・・・中学生の頃、再度祖母に「うどんげの花」について訊いてみましたところ、
滅多に咲く花ではないということで、昔から忌み嫌われていたことを教えて
もらいました。 祖母も昔、うどんげの花が電球の傘に咲いているのを見つけた
ことがあり、その3日後、祖父の戦死を知らされたらしいのです・・・・。
・・・迷信でしょうし偶然なのかもしれませんが、それを知って以来、私は家の
照明のお掃除などはマメにするようになりました。
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第二十七話 〜 声 
・・・・あなたが普段、何気に耳にする音や声・・・。それは果たして
この世のものでしょうか? ・・・そう言い切れるでしょうか・・・?
ゆったりとした午後のひととき、リビングで一人コーヒーを飲んだり寛いで
いる時のことなのですが、最近時折窓の外から何かおかしな気配を感じて
いたのです。
天気の良い明るい日などは「気のせい気のせい」と自分に言い聞かせて
いたのですが、曇りや雨の日は何となく背筋がゾクッと寒くなるような
恐怖感を感じていました。 先日もそんなどんよりと暗い午後、そろそろ
子供達が学校から帰ってくる頃ねと、リビングで一人コーヒーを飲んでいた
時のことです。ドンヨリとした天気が更に陰り、急に強い雨が降り出して
きました。
・・・嫌な天気だわ・・・
そう思っていると、背後を何かヒンヤリとした気配が通り過ぎるのを感じた
のです。
・・・気持ちが悪くなりましたが、日中ですし、気のせいだと思い直していると・・・
「・・・気のせいなんかじゃ、ない・・・・」
・・・どこからともなく、幽かに男の低い声が耳に入ってきたのです。
その声に心臓がどうにかなるほど驚きましたが、心を落ち着けながら、
恐る恐る声のする方をゆっくりと振り向いてみました。
・・・・しかし、誰もいません・・・。
怖がっていると何気ない物音でも変に聞こえるものよね・・・と、溜息をつくと、
再び気を取り直し、コーヒーカップをキッチンへ持って行こうとした時・・・
「・・・連れて行ってやるよ・・・おいで・・・」
今度は信じられませんがハッキリと男の低い声でそう聞こえたのです!
・・・これは大変・・・と思い、とにかく私にその声の主の所へ行く意志はないと
いうことをハッキリと跳ね除けるよう心で念じ、声の主をなんとか鎮め、
浄化を試みました。・・・あの世へ連れて行かれたりなんかしたらたまりません
ものね。
しかし、私はプロの霊能者ではありませんので、あまり長い時間交霊して
いると体調が悪くなってきますし、子供達も帰ってくる時間帯でしたので、
神経を集中させ速やかに浄霊を試みましたら、意外とアッサリ消え去って
しまったようなのです。
悪霊かと警戒していましたが、通りすがりの霊だったようですね。・・・ああ、
それにしても怖かった・・・。
・・・もし、霊の声が聞こえた時は、冷静な判断が必要です。特に霊媒体質の
方は霊の声に惑わされないよう十分気をつけて下さいね・・・。
・・・・さて・・・あなたが普段、何気に耳にする音や声・・・。それは果たして
この世のものと言い切れるでしょうか? ・・・もしかすると・・・それは・・・・・・

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第二十四話 〜 お願いがあるのです 
昨夜の出来事です。夜中の2時前後、私はなかなか寝つけずベッドの中で寝返り
をうったり羊を数えたりしていました。羊が34匹くらいを数える頃、足元からスーっと
ヒンヤリした冷気が漂ってくるのを感じました。 時計を見ると2時13分。
・・ヤバイなあ・・と思っていたら案の定、お約束通りの金縛りにあってしまったのです。
厄介なのが出てこなければいいなあと願いつつ、なにやら怪しい気配を感じる
右側を横目で覗ってみると、そこにはハッキリは見えないのですが、白い着物を
着た女性がボンヤリと立っているのです。 でた!ヤダなぁもぅ・・・と思いながら、
私は心の中で「何か私に用事があるの?」と、聞いてみました。 すると彼女は
重苦しくうめくような声でこう言いました。
「 ・・・・ お ね が い が あ る の で す ・・・・ 」
「・・お願いって、何? っていうか、とりあえず金縛りを解いて下さいよ?!」
そう心で叫ぶか叫ばないかのうちに、私の体は嘘のようにスッと解放されたのです。
・・・しかし、彼女の姿は消えません。 よく見ると、彼女はシクシク泣いているでは
ありませんか。 「何がそんなに悲しいの?お願いって何ですか?」
すると彼女はまた、地を這うような低い声で話し始めました。
「・・・ 帰り道がわからないのです。 お願いです。私はこの辺りからずっと
離れられず、いつまでたっても帰れないのです。大切な人がいるはずなのです。
お願いです。 私をあの人の所へ連れて行って下さい・・・・」 と。
「帰るって・・・?成仏のことかしら? あなたの言っていること、あまり良く理解
できないし、できるかどうかわからないけど、できる限りのことをやってみるわね。
でももし、私で駄目ならちゃんとした法力のある方の所へ行って頂戴ね。」
私は浄化の準備をし、手を合わせ始めました。すると彼女の髪の毛が逆立ちはじめ
風も吹いていないのに着物が揺れはじめました。 と同時に、私の方は何故か
どうしようもなく喉の辺りが苦しくなってきて、胸が痛くなってきました。私は咽返り
咳き込みながらも必死でお線香を足しながらできる限りお経を唱え、彼女が成仏
できるよう必死で祈りました。
気付けば朝でした。 息子の「おはよう!」で、目が覚めたのです。 寝室は散乱
していました。 横で寝ていた彼が目覚め、荒れた寝室を見てギョッとしました。
私は塩や線香を片付けはじめ、ふとベッドの下を覗くと、小さな鈴が落ちていました。
見覚えがないなぁ・・・ と思い、鈴を手にした瞬間、フワッと暖かい風が私の心を
通りすぎました。
「・・・・ ありがとう ・・・・」
確かにそう聞えました。 え?昨夜の彼女・・・?。・・・と、確信はありませんし、空耳
かもしれませんが、しかし、「ありがとう」の一言は、昨夜の重苦しいうめき声とは
打って変って、優しく美しい声に聞えました。
無事大切な人に会えたのかな・・・・ などと考えながら、眠い目を擦り、朝食の支度を
はじめました・・・・。
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第二十三話 〜 パーキングエリアのトイレ
パーキングエリアには、様々な霊が集まっています・・・。事故に遭った霊などが、
この世に未練を残しながら、フワフワさ迷っているのです。特に、エリア内のトイレは
霊の温床となっていることが多いのですよ・・・・。
あれはそう、ある週末、家族で遠出した時の事です。土曜日の夕方、もう日も暮れ
はじめ、目的地に着くのは夜遅くになるわねと話していました。 途中、私はトイレに
行きたくなり、パーキングエリアに立ち寄ったのです。子供達は車の中で
ぐっすり眠り込んでいたので、彼と子供達を車に残し、私は一人、トイレへと向かい
ました。パーキングエリアには、時々交通事故の写真を展示してあるところがあり
ますが、そのパーキングエリアにも数点の写真が貼り出されていました。
警告の為だろうけど、あまりいいものではないわね・・・ そう心の中で呟きながら
トイレに駆込みました。トイレは清掃の直後だったらしく、私の他には先客はいなくて、
私は一番奥のトイレに入りました。 奥までには15以上の個室があったように
思います。 家族も待っているので、急いで用をすませると、水を流しました。 ・・・
と、その時、私は何かを感じたのです。 「・・・・誰かが・・・私を見ている・・・!」
人の強い視線を後ろに感じたのです。その気配は上の方から感じました。
私は思いきって後ろを振り返りました。すると・・・・
・・・首から上の男の顔が覗いているではありませんか!!!
濡れたように額に張りついた髪と、じっとりと見下ろすなんとも無表情な冷たい
視線は、ゾッとするような異様な感じでした。「キャ〜〜〜〜!痴漢!!」 私は
大声で叫びました。 すると、その顔は私の悲鳴と共にフっと消えたのです。
無礼な男を逃がしてなるものかと、すぐにドアを開け、飛び出したのですが・・・・
そこには誰もいませんでした。 「・・・おかしいな・・・・」と思い、もう一度トイレの
個室に立ち、後ろを振り向いてみましたが・・・なんと、私の背後は壁だったのです。
ですから、誰かがこちらを覗き込むのは不可能な状態でした。 では、あの男は
いったいどこから覗いていたのでしょう? ひょっとして、あれは・・・・・・
私は急に怖くなり、すぐにトイレを出ました。小走りで彼の待つ車に戻る途中、
ついさっき目にした事故の写真の前を通り過ぎようとしました。 その時、一瞬
でしたが、一枚の事故の写真にボンヤリとですがトイレの中で見た男の顔が
恨めしそうに浮かび上がったように思うのです。私はそこで立ち止まり、その
写真の前で手を合わせると、心の中で般若心経を唱え、車に戻りました。
「・・・・ねえ、せっかく出てきたけど、今日はもう、帰らない?」 「・・・い、いいけど、
どうして?」 「・・・・理由は帰ってから話すわ。」 「・・・わかった。じゃあ、どこかで
夕飯食べて帰ろうか?」
・・・・きっとあの先で、私が見た男は事故に遭って命を絶った・・・。 写真の前
で手を合わせている時、それを強烈に感じたのです。 帰り道、急に雨が降り
出してきました。 雨脚はどんどん強くなり、車を叩きつけるほどになりました。
「戻ってきて良かったね。」 彼はホッとしたようにそう呟きました。 トイレの中で
見た男は、事故に注意した方が良いということを、警告していたのか、それとも
私を引き込みたかったのか、それは未だに謎です。

・・・・パーキングエリアのトイレには、様々な霊が漂っています。 ひょっとすると、
貴方もエリア内で無意識に、霊と遭遇していたかもしれませんよ・・・・・。
引き込まれないよう、十分注意をして下さいね。 遠出する時には、お清め用の
お塩を携帯する事をお薦めします。
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第二十二話 〜 携帯電話
私はこの2年の間に、携帯電話を3度程変えました。1度目は得体の知れない誰か
からの無言電話に悩まされ、2度目は・・・・・・。
そう、あれはちょうど、去年の今頃の出来事です。私は新しく携帯電話を買い換え
ました。その前に使っていた時は、悪戯電話や間違い電話が多く掛かってきて、
気分が悪いので機種を買い換えたのです。 その頃の最新機種だったので、
使い心地は良好でした。しかし、携帯電話を新しくして一週間を過ぎた頃
でしょうか・・・。 ある夕方、息子が「かーちゃん、電話かかってるよ」と、
私を呼びます。息子はテーブルに置いてある携帯を指さしました。液晶画面が
点灯しています。手を取り上げてみると、非通知です。着信音は鳴ってません。
通話ボタンを押した途端、切れてしまいました。 「変ねえ・・・どうして鳴らないの
かしら?」「音を切ってるんじゃないの?」「そんなことないわよ。」そう言いながら
チェックしてみましたが、音を切る設定にはなっていません。念の為、部屋の
電話からかけてみましたらちゃんと音が鳴りました。 その時、私はふと
思い出しました。ここ一週間の着信歴を。同じようなことがあったことを思い
出したのです。 出掛けている時や、マナーモードにしている時だったので、
着信音には気づかなかったのですが、電話番号は非通知で、誰がかけて
来たのかわからない着信歴が数件あったのです。 息子は 「お化けから
かかって来たんじゃないの?」と、ニヤニヤ笑ってます。「気味の悪いことを
言うの、止めてよ。」 私は一瞬ゾッとしましたが、気を取りなおして夕食の
準備に取りかかりました。次の日もまた次の日も、音の鳴らない非通知着信は
かかってきました。私は本当に気味が悪くなり、霊能力のある先生に
相談しました。 すぐに携帯電話を持っていらっしゃいと言ってくださったので、
子供達を連れて、先生の家へと向かいました。 先生は真剣に携帯電話を
見つめると、呟くように話し始めました。 「この携帯電話、これから清めて
あげるわ。でももう、これは使わない方が良いわね。これを買った時に、一緒に
ついて来てしまったのかもしれない。きっと買った場所が良くなかったのね。
電話に憑いちゃったんだわ」と。
先生の浄霊が始まりました。 だんだん空気が重苦しくなってきました。
10分くらい経った頃でしょうか。 「あ、また光ってる!」 息子が携帯を見て
叫びました。携帯の液晶画面が点灯しているのです。私が携帯を取ろうとすると、
「触っちゃ駄目!」と、先生に携帯を跳ね除けられてしまいました。
私はドキっとして、ただ、その場で手を合わせ、先生の様子を見守っていました。
無事、浄霊は終わり、携帯電話に憑いた霊には成仏して頂けたそうです。
「・・・点灯した時、何故触ってはいけなかったのですか?」 と、先生に尋ねると、
「相手の霊がマリちゃんと話をしたがっていたんだよ。 ・・・何故か、相手の霊は、
マリちゃんをえらく気に入って、友達になりたかったみたいだね。 女性の霊だったよ。
一言会話を交わしてしまえば、あっちの世界へ引きずり込まれてしまうからね。
危なかったよ。」 ・・・・・
あのまま、先生に相談もせず、音の鳴らない着信が続き、そのうちタイミング良く
女性の霊と会話を交わしていたら・・・・・。 それを考えると恐ろしくなります。
皆様も、どうか、音の鳴らない非通知着信には気をつけて下さいね。
・・・ほら、貴方の携帯の液晶画面が、今、音もなく点灯していませんか・・・・・?
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第二十一話 〜 お盆 
やっとお盆休みが終わるので、二十一話をアップする気持ちになりました。
実はこのお盆休み中、2度ほど話をアップしたのですが、何故か、翌朝チェック
してみると消えているのです。 ・・・気味が悪くなり、お盆時期はこういう話をアップ
してはいけないのかな・・などと思い、少しの間、この部屋に手を加えるのを止めて
いました。
・・・お盆の時期になると、いつもに増して大変奇妙な体験をします。例えば誰かが
ドアを開けて家の中に入ってくる気配や、人影を感じるのは勿論、誰もいるはずの
ない部屋から声が聞こえて来たり、ラップ現象があちこちで起きたり・・・。
一番奇妙なのは体に感じる何とも言えない不気味な感触です。 何かが見える、
聞こえるくらいなら、気のせいなんだと片付けられますが、 突然人がのしかかって
くるような重苦しさや、冷たい手が私をぎゅっと掴んだり、ある時は強い力で
引きずられたりなどは、本当に気味が悪いのです。 お盆休み中も、ずっと変な
現象が続いていました。
私は何故か、特に小さい子供の霊に好かれやすいようです。 また、息子も霊感が
ある子なので自然と呼び寄せてしまうのです。 このお盆期間中、子供の霊だけでも
4人の訪問がありました。 私がキッチンで何気に食器を洗っていた時、ふわっと
小さい子供が後ろから抱き付いてきたのです。 てっきり娘だと思った私は
「どうしたの?」と笑いながら後ろを振り向きましたが、後ろには誰もいません。
・・・いつものことか。そう気を取りなおし、洗物を続けていると、「お菓子ちょうだい!」
という声が。「ちょっと待ってね、もうすぐ洗い終わるから・・・」と、声のする方向を
チラッと見ると、そこには一瞬でしたが、赤いスカートをはいた小さな女の子が
ニッコリと微笑んで私を眺めていました。 すぐに息子を大声で呼び、「ねえ、また
誰か連れてきたの?」と聞くと、「・・・だって、付いて来るんだもん。」と。
その夜、冷たく冷えたスイカを切りました。 子供用のお皿を6つ用意し、小さく
切ったスイカを乗せました。 彼は、「・・また、妙な来客があるのか?」と、呆れ顔。
「とーちゃん、そんなこと言ったらゆみちゃんが傷つくよ!」と、息子。 「ゆみちゃん
って誰だ?」 怪訝そうな表情の彼を宥めるように私は 「頂きましょうよ、ね。」と
肩を叩く。「 ・・・ま、慣れたけどな。 なんだかこの家に住んでると、昔観た
奥様は魔女を思い出すことがあるよ・・・」 ・・・本当に、彼には気の毒に思います。
私と知り合うまでは、霊現象など一切信じなかった彼ですが、目の当たりにする
不思議な現象があまりにも多すぎて、困惑状態にあるのですから・・・。
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